建設業の休み、特に週休2日制の導入は、近年の建設業界において極めて重要かつ喫緊の課題となっています。
従来長時間労働が常態化しており、その影響で若年層を中心に人材不足が加速している現状では、持続可能な働き方への転換が急務です。
さらに、「2024年問題」として知られる時間外労働の上限規制の完全適用も目前に迫り、業界全体の労働環境の見直しが不可避となっています。
今回は、建設業における休日取得の現状やその課題、そして週休2日制を実現するための具体的な取り組みについて、詳細に解説します。
建設業の休み現状と課題
時間外労働規制と2024年問題
2019年4月に施行された働き方改革関連法により、全産業で時間外労働の上限規制が順次導入されました。
建設業においては、業界特有の事情を考慮し、5年間の猶予期間が設けられていましたが、その猶予も2024年3月で終了しました。
2024年4月からは、建設業でも原則として「月45時間・年360時間」という時間外労働の上限が罰則付きで適用されます。
特別条項付き36協定を締結した場合でも、年間720時間、単月80時間(複数月平均80時間)を超えることはできません。
この法改正により、建設現場では労働時間を削減せざるを得ず、週休2日制を導入して計画的な働き方へ移行することが求められています。
週休2日制導入の現状と普及状況
週休2日制の導入は、ゼネコンを中心とした大手建設会社で徐々に進展しているものの、全業界的には未だ普及途上にあります。
特に中小の建設企業や、下請け・孫請けといった多層構造の末端に位置する企業では、人員や予算の都合により導入が困難な状況です。
近年では、国や地方自治体が発注する公共工事で「週休2日を前提とした契約」が増加しつつあり、これが制度の普及を後押ししていますが、実際には現場の天候、資材の納期、協力業者との調整など、様々な障壁が存在しており、制度の定着にはさらなる支援と工夫が求められます。
休日取得の課題
建設業は、屋外での作業が中心であるため、天候に大きく影響されるという特徴があります。
雨天時には作業が進まず、晴れの日に業務を集中させる傾向が強く、その結果、休日の取得が後回しにされることが多くあります。
加えて、建設現場は工程ごとに多くの専門業者が関わるため、少しの遅れが全体のスケジュールに大きな影響を及ぼすというプレッシャーもあります。
そのため、工程管理に余裕を持たせた計画を立てづらく、休暇を取りにくい状況が慢性化しているのが現状です。
中には、休日出勤が常態化している現場も存在し、肉体的・精神的な疲労が蓄積されやすい環境となっています。
建設業における週休2日制のメリットデメリット
メリット 従業員の健康増進とモチベーション向上
週休2日制の導入は、従業員の身体的な疲労回復や、精神的なストレスの軽減に大きく貢献します。
特に肉体労働が中心の建設現場では、適切な休養がなければ生産性や安全性が著しく低下するリスクがあります。
休みが定期的に確保されることで、労働者は余暇を充実させることができ、私生活とのバランスが取れるようになります。
その結果、業務へのモチベーションや集中力が高まり、作業効率の向上や労働災害の減少といった効果も期待できます。
安全管理の観点から見ても、週休2日制は非常に有効な取り組みです。
メリット 企業イメージ向上と人材確保
建設業は長年にわたり、「きつい・汚い・危険」のいわゆる「3K職場」というイメージが根強く、若者や未経験者が敬遠しやすい業種とされてきました。
しかし、週休2日制をはじめとした働きやすい環境整備は、こうしたマイナスイメージを払拭し、企業の魅力を高める有効な手段となります。
これにより、若手人材の採用や、経験者の再雇用にも好影響を与え、長期的には人材の定着やスキル継承にも繋がります。
働き方改革に積極的な企業としてのブランド力が向上すれば、競争力の強化にもつながります。
デメリット 工期延長とコスト増加
週休2日制を導入すると、単純計算で作業日数が年間約50日減ることになり、それにより工期の延長が避けられないケースがあります。
これに伴い、工期を短縮するための追加費用や、人員の増強など、様々なコストが増加する可能性があります。
特に民間工事では、発注者の理解を得ることが難しいことも多く、導入への障壁が高くなりがちです。
ただし、工程の見直しや機械化・ICT活用による業務効率化、事前準備の徹底などにより、コスト増加を最小限に抑える工夫も可能です。
デメリット 給与体系の見直しと賃金減少リスク
建設現場では、日給制や出来高制を採用している企業が少なくなく、休日日数が増えることで、労働者の実収入が減少するリスクがあります。
このため、週休2日制を実現するには、月給制への移行や、基本給の底上げといった給与体系の見直しが必要となります。
また、時間外労働の削減によって残業手当が減る場合にも、総合的な賃金保証の在り方について検討が求められます。
労働条件の改善と収入の安定を両立させる制度設計が今後の重要な課題です。
建設業休みを実現するための具体的な対策
業務効率化のためのICT活用
BIM(Building Information Modeling)やCIM(Construction Information Modeling)といったICTツールの導入は、建設業の業務効率化において非常に有効な手段です。
これらのシステムを活用することで、設計段階から施工管理までのプロセスを可視化・一元化でき、関係者間の情報共有がスムーズになります。
その結果、無駄な作業や手戻りが減少し、工期の短縮と労働時間の削減に繋がります。
加えて、ドローンやクラウド型施工管理アプリの活用も、現場作業の効率を飛躍的に向上させる手段として注目されています。
工期設定と費用交渉
発注者との間で適切な工期と予算について事前に合意を得ることは、無理のない働き方を実現するうえで極めて重要です。
過密なスケジュールは、休暇の確保を困難にし、品質や安全面でもリスクを高めます。
そのため、見積り段階から「週休2日を前提とした工程表」の提示を行い、現実的な工期とそれに見合った費用の確保を徹底する必要があります。
発注者の理解と協力を得るためには、働き方改革の趣旨や法改正の背景を丁寧に説明することも大切です。
関係企業との連携強化
建設業は多くの協力業者との連携によって成り立っているため、個社だけでの改革には限界があります。
元請けから下請けまでが一体となって工程調整や情報共有を行うことで、作業の重複や待機時間の削減が可能となり、全体の効率化に繋がります。
また、業者間での協力体制を構築し、交代制勤務やシフト制の導入など柔軟な働き方を実現する工夫も効果的です。
相互理解を深めながら、共通の目標として「働きやすい職場環境づくり」を推進することが求められます。
政府支援策の活用
国土交通省や厚生労働省をはじめとする関係機関では、建設業における働き方改革を後押しするための補助金や助成制度を多数設けています。
たとえば、ICT導入支援や技能者のキャリアアップに関する研修費用の補助などがあり、これらを活用することで企業の負担を軽減できます。
最新の制度情報を積極的に収集し、戦略的に活用することが、実効性のある改革の鍵となります。
まとめ
建設業の休日に関する課題は、時間外労働の規制強化や、週休2日制の導入の遅れ、休暇取得の困難さといった多方面に渡っており、業界全体の構造的な改革が求められています。
しかし、ICTの積極的な活用、発注者との協議による適正な工期設定、協力業者との連携強化、そして政府の支援制度の有効活用といった具体策を講じることで、実現への道は確実に拓かれています。
週休2日制の実現は、従業員の心身の健康維持、企業の魅力向上、持続可能な人材確保といった多大なメリットをもたらします。
今後は建設業界全体で意識と行動を変革し、より健全で魅力的な労働環境の構築を目指すことが、持続的成長への第一歩となるでしょう。
☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡
創業60余年塗料専門商社コジマヤグループ
コジマヤ興業(株)リフォーム支援事業部
☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡